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担当者
谷敬太
問い合わせ先
ktani@cc.osaka-kyoiku.ac.jp
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領域
応用科学(ものづくり、暮らし、あそび、エネルギー、環境、防災など)
教材の形式
実験・実習, トピックス、発展的学習
研修、講座、授業
教員研修(小中高) 科学クラブなど(小中高)
教科、科目

フェノールフタレインとラインマーカに使用されている色素の簡便な合成

はじめに

 実験において劇的な変化が起こる反応は、中学生あるいは高校生にとっておもしろく感じられ、教材としても魅力的である。

 ここでは、高校の教科書に「溶液の色が無色から赤紫へと大きく変化する」、と記載されているフェノールフタレインを取り上げ、フェノールフタレインならびにその誘導体の合成、色の変化を通じて基本的な実験操作と色の変化について考えることにする。使用する実験器具や操作については、中学・高校の理科室でも十分行えるように工夫されている。

 

1、フェノールフタレイン(ジメトキシフェノールフタレイン)

 フェノールフタレインは中和反応の酸塩基指示薬(変色域 pH 8.3~10.3, 塩基性側で赤紫色)として有名であるが、高校の教科書にその構造式や合成は示されていないので、まず、合成方法と構造式を下記に記した。

フェノールフタレインの合成方法と構造式

 このように、無水フタル酸とフェノールとを酸(硫酸)触媒下で加熱することにより、短時間かつ一段階でフェノールフタレインを簡単に合成できる。加熱はアルコールランプで行い、反応は試験管中で行う。アルカリ性で赤紫色のフェノールフタレインを含む溶液に、高濃度のアルカリ溶液を加えてどのような変化が起こるのかを調べるとさらに興味ある変化が生じる。

 フェノールの代わりに2-メトキシフェノールを用いて、先程と同様に無水フタル酸と酸触媒下で反応させると、ジメトキシフェノールフタレインが得られる。メトキシ基の効果のため、アルカリ性の溶液を加えると吸収が長波長側まで延びているので青紫色に見える。

 可視・紫外分光器でフェノールフタレインとジメトキシフェノールフタレインのアルカリ性での吸収スペクトルを測定し、吸収波長と色の関係を考察する。

(実験1)フェノールフタレインの合成
操作

  1. 無水フタル酸(約0.04g)とフェノール(約0.05g)を秤りとり、試験管にいれる。濃硫酸2滴をピペットで加え、ガラス棒で均一になるようにかき混ぜる。
  2. 試験管挟みで持ち、振り混ぜながらアルコールランプで5~10秒程度加熱すると、すぐに赤色に変化し液状化する。ガラス棒でかき混ぜる。この操作をさらに1~2回繰り返す。
  3. 数分間放冷し、試験管が手で触れて少し温かいくらいの温度になったら、イオン交換水10mlを加えガラス棒でかき混ぜる。
  4. 3)の灰色に濁った反応混合物をろ過し、ろ液をビーカーに集める。このろ液約1mlをピペットで別の試験管にとり、イオン交換水2mlでうすめる。10%水酸化ナトリウム溶液をピペットで1滴ずつ滴下すると溶液が赤紫色になる。次に、希塩酸を一滴ずつ加えて溶液が元の色に変化することを確かめる。

 

 2、フルオレセイン(蛍光ペンの色素)

 フルオレセインは、無水フタル酸とレゾルシノール(レゾルシン、あるいは1,3-ジヒドロキシベンゼン)から酸触媒下で加熱して合成できる。レゾルシノールという物質名は、フェノールと構造が大きく異なるように思えるが、実際はフェノールのメタ位にさらに水酸基が一つ増えただけの構造の違いである。従って、無水フタル酸に対してレゾルシノールはフェノールと同様に反応した中間体を経由して、分子内で脱水することにより新たに6員環を生成した分子であるフルオロセインになる。つまり、フェノールフタレインの構造式の下方のベンゼンの間に酸素が入っているかどうかの分子全体から見ればわずかな相違である。

アルカリ性での蛍光体の構造

 しかしながら、この相違がフェノールフタレインとフルオレセインの光電子物性に大きく効いてくる。吸収スペクトル(アルカリ性)でもその違いはわかるが、蛍光スペクトルでは両者の違いは際立ってくる。フェノールフタレインは無蛍光(蛍光を発しない)であるのに対し、フルオレセインは鮮やかな黄緑色の強い蛍光を発する。この強い蛍光は、蛍光ペンのみならず、金属イオンの分析や医療現場における視覚の検査にも利用されている。

 蛍光とは、励起状態から基底状態に分子が失活するときに発する光のことであり、フルオレセインの蛍光スペクトル測定を行う。すると、先程のフェノールフタレインの吸収スペクトルとフルオレセインの蛍光スペクトルが偶然ではあるが、その波形が似ていることがわかる。これらの測定結果から吸収と蛍光(発光)について総合的に考察する。

(実験2)フルオレセインの合成
操作

  1. 無水フタル酸(約0.04g)とレゾルシン(約0.05g)を秤りとり、試験管1にいれる。濃硫酸2滴をピペットで加え、ガラス棒で均一になるようにかき混ぜる。
  2. 試験管挟みで持ち、細かく振り混ぜながらアルコールランプで5秒程度加熱すると赤茶色に変化する。ガラス棒でかき混ぜる。
  3. 再び5秒程度加熱すると固体がほとんど溶ける。ガラス棒でかき混ぜた後、もう一度5秒程度加熱する。
  4. 数分間放冷し、試験管が手で触れて少し温かいくらいの温度になったら、エタノール約10mlを加え、ガラス棒でかき混ぜて固体をできるだけ溶かす。
  5. イオン交換水3mlの入った3本の試験管2,3,4に4)の溶液数滴を加える。試験管3には希塩酸を、試験管4には10%水酸化ナトリウム溶液を加え、3本の試験管2-4を比較する。試験管4はアルカリ性になると黄緑色の蛍光を生じる。