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担当者
久保埜公二
問い合わせ先
kubono@cc.osaka-kyiku.ac.jp
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領域
基礎科学(教科の基礎、発展的学習) 応用科学(ものづくり、暮らし、あそび、エネルギー、環境、防災など)
教材の形式
実験・実習, 授業のヒント, トピックス、発展的学習
研修、講座、授業
教員研修(小中高) 科学クラブなど(小中高)
教科、科目

比色定量法による河川水中のリン酸イオン濃度測定

はじめに

 リンはカリウム,窒素と合わせて植物の三大栄養素であり,生物にとって欠かすことのできない元素である。また,リンは地中に広く存在する元素であることから,天然水中にも含まれているが,洗剤・肥料・屎尿等に多量に含まれているため,生活排水・工場排水・農業排水などから混入し,その含有量が増加する場合が多い。よって,リンを多量に含む家庭排水や肥料などが河川や湖に流入し続けると,その水域で富栄養化が起こり,プランクトンが大量発生し,赤潮などの環境問題を引き起こすことがある。その一方で,水質の良い水域,特に湖ではリンは乏しい栄養素で,植物プランクトンをはじめとして生物の生育を左右する因子になることがある。このことから,天然水中のリン濃度,とりわけ栄養素として利用されるリン酸イオン濃度を測ることは環境保全を行う上で重要である。ここでは大学周辺の河川水(大和川・石川・原川)中のリン酸イオンの濃度を分光光度法(モリブデンブルー法)により測定する。

器具

分光光度計,吸収セル,100 mLメスシリンダー,2mL駒込ピペット,10 mLメスピペット,50 mL比色管,比色管立て,安全ピペッター,グラフ用紙

試薬

  • モリブデン酸アンモニウム溶液
      モリブデン酸アンモニウム四水和物1.2gと酒石酸アンチモン(III)カリウム三水和物
      [劇物]0.048gを水60 mLに溶かす。これに(1+1)硫酸を32 mL加え,全容を100 mLにする。
  • L-アスコルビン酸溶液(10℃保存)
      L-アスコルビン酸3.6gを50 mLの水に溶解する。
  • リン酸標準溶液(0.01 PO43- mg/ mL ≡ 10 ppm)
      リン酸二水素カリウム(105℃で1時間乾燥)0.1432gをメスフラスコを用いて
      水100 mLに溶解し,さらにこれを100倍に希釈する。
  • 河川水(大和川・石川・原川)・・浮遊物をろ過によって取り除いたもの・・

実験

⑴ 標準溶液の調整と検量線の作成
  1. 安全ペッター50 mL比色管5本のそれぞれに10 mLメスピペットと安全ピペッター(右図)を用い,
    リン酸標準溶液を0,  2.0,  4.0, 6.0,  8.0,10.0 mL精確に採り,
    純水を加えて50 mLとする。
    (10.0 mL加えた溶液で最終的な濃度は2ppm)
  2. これに駒込ピペットでモリブデン酸アンモニウム溶液を2mL加えてよく混合し,
    更にL-アスコルビン酸溶液を0.5 mL加えて溶液をよく混合する。
  3. これらの溶液を,直射日光を避け10分間静置し,検量線用の標準溶液とする。
     ※図:検量線用の標準溶液(モリブデンブルー溶液)
    検量線用の標準溶液(モリブデンブルー溶液)
  4. これらの標準溶液の一部を吸収セルにとり,分光光度計を用いて波長880 nmにおける吸光度を測定する。(1nm = 10-9m)
  5. 縦軸に吸光度を横軸に濃度をとりグラフを作成して検量線を得る。

吸光度と濃度のグラフ 検量線とは吸光度(この値は溶液の濃度が濃い程,大きな数値となります)と濃度の関係を表す直線方程式です。これは数種類の既知濃度溶液(標準溶液)の吸光度測定を行い,縦軸に吸光度を横軸に濃度をとりグラフを作成して得られます。このグラフを使って未知試料の濃度を正確に求めることが出来ます。

 

吸光光度計の使い方 

1)PowerスイッチをONにし,30分間以上ウォーミングアップしておく。
2)使用するランプを選択する。(今回はタングステン・ランプ)
3)波長の目盛りを880 nmに合わせる。
4)RangeスイッチをABS 0〜1に合わせる。
5)純水(ブランク試料)の入ったセルを2つ用意し,一方は対照セルホルダーに,
  もう一方は試料セルホルダー入れて試料室のふたを閉じる。
6)光量調節つまみでメーターをABS=0に合わせる。
7)試料の入ったセルを試料セルホルダーに入れて試料室のふたを閉じる。
8)メーターの表示値を読みとる。(吸光度の測定)

⑵ 試料溶液の調整と吸光度測定
  1. メスシリンダーを用いて比色管に河川水(大和川・石川・原川 ~ろ過済み~)を50 mLをとる。
  2. これに駒込ピペットでモリブデン酸アンモニウム溶液を2mL加えてよく混合し,更にL-アスコルビン酸溶液を0.5 mL加えてよく混合する。
  3. これらの溶液を直射日光を避け10分間静置し,試料溶液とする。
  4. これらの試料溶液の一部を吸収セルにとり,分光光度計を用いて波長880 nmにおける吸光度を測定する。
  5. 検量線を用いて,4で測定した吸光度からリン酸の濃度(ppm)を求める。

リン酸イオン濃度の算出

①濃度計算

検量線の方程式(y = ax + b  x 濃度; y 吸光度)をグラフ(或いはパソコンソフト)から求め,この式に吸光度の値を代入し,河川中のリン酸濃度(ppm)を求める。

リン酸 0mL 2mL 4mL 6mL 8mL 10mL
濃度/ppm
吸光度

検量線の方程式: y=      x +        ・・・1式・・・

 ここで,xはリン酸イオンの濃度[ppm],yは吸光度を表す。

 

1式のyに河川水からの試料溶液の吸光度を代入して,2つの溶液のリン酸イオン

濃度xi を求めよう! ・・事業所排水(日間平均)基準値は8ppm以下・・

 

 大和川の吸光度:    ,  石川の吸光度:    ,原川の吸光度:     

 大和川の濃度:    ppm,石川の濃度:    ppm,原川の濃度:    ppm

  (きれいな川では0.1ppm以下です。)

 

②ppmとは?

parts per millionの頭文字を取ったもので,100万分率(106分の1)に相当する。試料1kg(約1L)中に1mg含まれる場合には1ppmになります。

   1ppm ≡ 100万分の1 ≡ 1mg/kg ≒ 1mg/L

演習

 測定したリン酸イオン濃度(ppm)をモル濃度(mol/L)に変換してみよう!

 ただし,リン酸イオンの分子量を94.97とし,河川水1kg の体積 は1Lとする。

参考文献

  • 日本分析化学会北海道支部 編,「水の分析」第4版,化学同人(1994),p269
  • 日本分析化学会近畿支部 編,「はかってなんぼ・学校編」,丸善(2002),p148